時効の中断―時効の中断事由―③承認―時効完成後の債務の承認
時効完成後の債務の承認
民法は、時効の基礎となる事実状態を破る一定の事実=時効の中断事由の一例として、「承認」をあげています。
ここにいう「承認」とは、時効完成前に債務者が債務を認める行為をいいます。
しかし、時効期間が経過してしまったあとでも、まだ可能性はあります。
時効完成後に債務者が債務を承認した場合には、時効の中断とは異なる法律構成にはなりますが、債務者は時効を主張することができなくなると解されているからです。
ただし、この場合、債務者が時効の完成を知っている場合と知らない場合とで、結論は変わらないのですが、若干法律構成が異なってきます。
1.債務者が時効の完成を知っている場合
民法第146条は、時効の利益の放棄について規定しています。
(時効の利益の放棄)
第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
この条文の反対解釈から、時効の完成後であれば、時効の利益を放棄することは許さるということになります。
そこで、通説・判例は、債務者が時効の完成を知ったうえで債務の存在を承認したのであれば、時効の利益の放棄に当たるものとして、債務者は時効を主張することはできないとしています。
2.債務者が時効の完成を知らない場合
また、債務者が時効の完成を知らずに債務の存在を承認した場合は、 時効の利益の放棄には該当しませんが、信義則上、債務者は時効を主張することはできないとしています。
なお、ここで、「信義則上」というのは、自分で債務の存在を認めたのであるから、それと反するような行為は許されないといった意味合いです。
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