契約の2つの注意点
はじめに
民法は私法の一般法
民法は私法の一般法とされています。
平たく言えば、ビジネスや日常生活の基本ルールを定めたもの、それが民法です。
民法の指導原理・理念・趣旨
その民法は、私的自治の原則、契約自由の原則、自由平等などを基本原理としています。
自由・平等な個人がその意思により自由に権利義務関係を設定できるという社会を民法は理想としているわけです。
民法の定める権利義務関係の分類
さて、この権利義務関係の種類に応じて民法の内容も分類することができます。
つまり、民法は財産法と身分法(例えば、夫婦関係や親子関係など)という2つに大きく分類されていますが、財産法はさらに物権(物に対する権利義務関係)と債権(人に対する権利義務関係)とに分類されています。
ただし、個人はその意思により自由に権利義務関係を設定できる(権利義務関係の源泉は、法律ではなく、個人の意思にある)といいましたが、実は物権や身分法の領域ではこの原則はかなり制限されています。
強制規定(強行法規)と任意規定(任意法規)
つまり、物権や身分法の領域では個人の意思よりも法律の規定が優先して適用される場合が多いということなのですが、こうした規定は強制規定(強行法規)と呼ばれています。
これに対して、個人の意思が優先される規定が任意規定(任意法規)ですが、債権の領域は基本的に任意規定であるとされています。
そして、ビジネスにおける契約の世界は、この債権の領域に属しています。
契約自由の原則
…と以上前置きが長くなりましたが、ここで言いたかったのは、原則としてビジネスの世界では契約の内容の方が法律の規定よりも優先され、この場合、任意規定たる民法の規定は個人の意思を解釈したり、補充したりするために使用されるにすぎない(解釈規定・補充規定にすぎない)ということです。
まさに「契約自由」です。
契約においては、どのような相手と(相手方選択の自由)、どのような内容の契約をするか(契約内容の自由)、そして、どのような方式による契約をするか(契約方式の自由)が当事者間に委ねられています。
もちろん、原則があれば、その例外があります。
たとえば、契約方式の自由に対する例外としては、要物契約とされている契約の存在(民法では、消費貸借、使用貸借、寄託)や手形・小切手の要式性というものがあります。
契約書の2つの注意点・ポイント
ただし、契約自由の原則があるとはいっても次の2点は注意しておく必要があります。
契約の証拠を残しておくこと
今述べたように契約自由の原則の内容の一つして「方式の自由」があると言いました。
「方式の自由」とは、具体的に言えば、契約を結ぶにあたっては口頭であっても書面であっても構わないし、その書面の書式も特に決まったものはないということです。
しかし、口頭だけで契約を締結し契約書などの書面で契約の内容を文書化しておかないと、争いが起こった場合には証拠がないため、最終的な問題解決法である裁判でこちらの主張を認めてもらうことは困難です。
また、仮に文書化してあったとしても、必要な点を押さえた書式でなければ、後々争いが出てくる可能性もあります。
できる限り民法で定められている契約のパターンを見本とすること
さらに、次の点も注意しておく必要があります。
民法の債権編には当事者間の合意内容を解釈したり補充したりするため13種類の典型契約(有名契約)が規定されています。
言葉を換えると、民法において契約書がある程度定型化(パターン化・書式化)されているということです。
しかし,契約自由の原則から現実には民法に規定されていない契約(無名契約)やその複合形(混合契約)も多くあります。
こうした民法に規定されていない契約などにおいては、当事者間が交わしたルールしかないということにもなりかねないので、後日もめる原因ともなります。
したがって、可能であるならば、民法で定められている契約のパターンを見本にしておいた方が無難といえるでしょう。
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