賃貸人の変更(賃貸人たる地位の移転)
賃貸人の変更
たとえば、賃貸マンションなどでよくあることであるが、賃貸物件が売却された場合、その法律関係をどのように構成するのかが問題となる。
具体的には、次の3点がさしあたって問題となる。
- 賃貸物件の所有権の移転により賃貸人たる地位も当然に移転するのか
- 賃貸人たる地位も当然に移転するとして、賃借人の承諾は必要か
- 旧賃貸人の賃借人に対する変更通知は必要か
これは、民法の世界では、所有権者であることと賃貸人であること(つまり、物権と債権)はまったく別なこととして理論構成されていることに由来している。
ここではその結論だけを押さえておく。
なお、上記3点以外にも、敷金・保証金はどうなるのかという問題もある。
1.賃貸人たる地位の移転
所有権の移転とともに賃貸人たる地位も当然に移転する
先述したように、原則として、賃貸物件を買い受け、その所有者になったからといって当然に賃貸人となるわけではない。
しかし、判例・通説では、賃貸人、賃借人の合理的意思解釈(通常だったらそう考えるであろうという解釈)や、所有権の帰属と賃料債権の帰属とが分離することは避けるべきであることを理由・根拠に、所有権の移転とともに賃貸人たる地位も当然に移転すると解している。
2.賃借人の承諾
賃借人の承諾は不要
法律上、賃貸人たる地位の移転は債務引受の性質も有しているので、理論的には、新賃貸人が賃借人に賃貸人たる地位の移転を主張する(たとえば、家賃を請求する)には、原則として賃借人の承諾が必要ということになる。
しかし、判例・通説では、賃貸人の債務は没個性的であり、賃借人の不利益とならないことから、賃借人の承諾は不要としている。
3.旧賃貸人の賃借人に対する変更通知
譲受人が債権譲渡を第三者に主張するには民法上譲渡人から債務者へ通知をすることが必要とされている。
そして、賃借権も債権のひとつである。
したがって、新賃貸人が賃借人に対して賃貸人たる地位の移転を主張する(たとえば、家賃を請求する)には、原則として、譲渡人、つまり、旧賃貸人から賃借人への賃貸人変更の通知が必要ということになる。
しかし、判例・通説では、所有権移転登記を具備すれば、新賃貸人は賃借人に対して賃貸人たる地位の移転を主張できるとし、変更通知は必ずしも必要とされていない。
ただし、無用の混乱を避けるため、実際には賃貸人が変更になった旨の通知をしているところが多いと思われる。
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