賃貸借契約の解約の申し入れ―基本知識―建物の場合
賃貸借契約の解約の申し入れとは
賃貸借契約の解約の申し入れの定義・意味・意義
賃貸借契約の解約の申し入れとは、貸し主(家主・地主)、あるいは借り主の一方的な意思表示によって、将来に向かって賃貸借契約を終了させるをいいます。
民法
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第六百十七条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。
解約の申入れの例文テンプレート
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建物賃貸借契約の解約申し入れの要件・条件
賃貸借契約の解約の申し入れの条件については、民法のほか、借地借家法という法律が規定しています。
これらをまとめると、建物の賃貸借契約の解約の申し入れをするには、次の条件を満たす必要があることになります。
- 契約で賃貸期間を定めていないこと等
- 解約の申し入れに6ケ月(賃貸人が解約の申し入れをする場合)、または3ケ月(賃借人が解約の申し入れをする場合)の猶予期間をおいていること
- 解約の申し入れをする正当な事由があること(貸し主が解約の申し入れをする場合)
1.契約で賃貸期間を定めていないこと等
原則―契約で賃貸期間を定めていないこと
まず、契約で賃貸期間を定めていないことが必要です。
賃貸期間を定めている場合には、相手方に債務不履行(家賃不払いなどの契約違反)がない限り、一方的に賃貸借契約を終了させることはできません。
例外
ただし、契約期間を定めている場合であっても、以下の場合には、解約の申入れをすることができます。
解約権を留保する旨の特約がある場合
賃貸借契約書に解約権を留保する旨の特約がある場合は、中途解約をすることができます。
民法
(期間の定めのある賃貸借の解約をする権利の留保)
第六百十八条 当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。
この特約が入っているのが通常ですが、入っていない場合もありますので、注意しましょう。
また、次に述べるように、解約の申入れには一定の猶予期間が必要ですが、その猶予期間の長さもチェックしておきます。
たとえば、賃借人が解約の申し入れをする場合であれば、猶予期間は1~3ケ月となっていると思いますが、この期間が長くなるほど、賃借人にとっては不利となります。
定期建物賃貸借の場合
借地借家法が規定している定期建物賃貸借であれば、借家人は、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情があれば、同法に基づき、解約の申入れをすることが認められています。
借地借家法
(定期建物賃貸借)
第三十八条…
5 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
2.解約の申し入れに一定の猶予期間をおいていること
つまり、解約の申し入れをしてから、次の期間を経過したときに、建物賃貸借契約が終了するということです。
3.解約の申し入れをする正当な事由があること
借地借家法により、建物の賃貸人(家主・大家)による建物の賃貸借の解約の申入れには、さらに「正当な事由」があることが要求されます。
この「正当な事由」の具体的な中身は、次のようなものです。
- 建物の賃貸人と賃借人が、建物の使用を必要とする事情
- 建物の賃貸借に関する従前の経過
- 建物の利用状況及び建物の現況
- 建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出(いわゆる立ち退き料が支払われるのかどうかということ)
上記の点が総合的に考慮され、 建物の賃貸借の解約の申入れに、「正当な事由」があるのかどうかが判断されることになります(もちろん、争いになった場合のことですが)。
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