債権譲渡の対抗要件②―債務者以外の第三者に対する対抗要件(民法467条2項)―確定日付のある証書
債権譲渡の対抗要件―債務者以外の第三者に対する対抗要件
概要・概略・あらまし
債権譲渡の効力を当事者以外に主張するためには、債権譲渡契約とは別に、債権譲渡の対抗要件も満たす必要があります。
この債権譲渡の対抗要件には、債務者に対する対抗要件と、債務者以外の第三者に対する対抗要件に分かれます。
このページでは、このうち債務者以外の第三者に対する対抗要件についてまとめています。
この債務者以外の第三者に対する対抗要件については、民法467条2項が定めています。
民法
(指名債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 指名債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。
すなわち、次のどちらか一つが行われることが債務者以外の第三者に対する対抗要件となります。
債務者以外の第三者に対する対抗要件の規定の趣旨・目的・機能・役割
民法が、特に債務者以外の第三者に対する対抗要件を定めた趣旨は、次の2点にあります。
ただし、物権の対抗要件の趣旨は、民法467条2項が定める債権の対抗要件と同じく、取引の安全を図るという点のみにあります。
つまり、債務者に対する対抗要件を定めた対抗要件を定めた民法467条1項は債権特有の規定ということになります。
これは、物権は物を直接的排他的に支配する権利なので、他人の協力が不要で債務者という存在が介在する余地がない(したがって、債務者保護の必要はない)からです。
債務者以外の第三者に対する対抗要件
確定日付のある証書―内容証明郵便または公証人役場で確定日付印
債務者以外の第三者に対する対抗要件は、上述したとおり、次のどちらか一つが行われることです。
「譲渡人の債務者に対する通知」(債権譲渡通知書)または「債務者の承諾」(債権譲渡承諾書)については、次のページを参照してください。
債権譲渡の対抗要件①―債務者に対する対抗要件(民法467条1項)
ここでの問題は、「確定日付のある証書」とは何かということです。
確定日付のある証書とは、具体的には、民法施行法5条で列挙されています。
民法施行法
第五条 証書ハ左ノ場合ニ限リ確定日付アルモノトス
一 公正証書ナルトキハ其日付ヲ以テ確定日付トス
二 登記所又ハ公証人役場ニ於テ私署証書ニ日付アル印章ヲ押捺シタルトキハ其印章ノ日付ヲ以テ確定日付トス
三 私署証書ノ署名者中ニ死亡シタル者アルトキハ其死亡ノ日ヨリ確定日付アルモノトス
四 確定日付アル証書中ニ私署証書ヲ引用シタルトキハ其証書ノ日付ヲ以テ引用シタル私署証書ノ確定日付トス
五 官庁又ハ公署ニ於テ私署証書ニ或事項ヲ記入シ之ニ日付ヲ記載シタルトキハ其日付ヲ以テ其証書ノ確定日付トス
六 郵便認証司(郵便法 (昭和二十二年法律第百六十五号)第五十九条第一項 ニ規定スル郵便認証司ヲ謂フ)ガ同法第五十八条第一号 ニ規定スル内容証明ノ取扱ニ係ル認証ヲ為シタルトキハ同号 ノ規定ニ従ヒテ記載シタル日付ヲ以テ確定日付トス
しかし、通常は、債権譲渡通知書や債権譲渡承諾書を内容証明郵便にして郵送したり、公証人役場で確定日付印を打ってもらうことが多いです。
なお、債権譲渡特例法により、法人が債権譲渡をするには、以上の対抗要件に加えて、譲受人との共同申請により債権譲渡登記をすることが必要となります。
二重譲渡がなされた場合の優劣関係
原則
仮に、債権を売った人(旧債権者)がその後さらに別の人にも債権を売りつけてしまった場合(二重譲渡の問題)には、内容証明郵便で通知をした方が優先されます。
応用―具体例・事例・実例
確定日付のある証書が2つ以上ある場合
到達時説(判例・通説)
ただし、両者ともに内容証明郵便で通知がなされている場合には、「確定日付」の日時の先後ではなく、内容証明郵便が債務者に到達した日時の先後によってどちらが優先するかが決まります。
その他、では、確定日付のある証書が同時に到達した場合はどうなるのかとか、両方の譲渡についての通知・承諾がともに確定日付のある証書によらない場合はどうなるのか、などさまざまケース(論点)がありますが、ここでは省略します。
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