解雇―要件
解雇の要件
解雇は使用者側から労働者(従業員)への一方的な意思表示で行われるので、法律上、使用者の解雇権の濫用を防止するため、厳しい制限・制約が加えられています。
1.就業規則に定めてある解雇の事由(理由)にしたがっていること
常時10人以上の労働者を使用している事業所では、就業規則を作成し、これを労働基準監督署長に届け出なければなりません(労働基準法第89条)。
この就業規則には、解雇理由を具体的に明記することが義務づけられているので(労働基準法第89条第3号)、解雇は、まず、就業規則に定めてある解雇事由にしたがっていることが必要です。
なお、解雇を予告された労働者は、予告された日から退職の日までの間に、使用者に対し、解雇の理由についての証明書を請求することができます(労働基準法第22条)。
2.労働基準法が定める解雇の各種要件を満たしていること
社会生活の一般ルールである民法にも、労働(雇用)に関する規定はありますが、民法はあくまで対等・平等な当事者間のルールを定めたものにすぎません。
そこで、民法の特別法としての労働基準法が、社会的弱者である労働者側を厚く保護しています。
1カ月前の解雇予告または1カ月分の解雇予告手当の支払い
解雇予告制度
使用者は、労働者を解雇するには、 原則として、その1カ月前に解雇予告(通知)するか、1カ月分の解雇予告手当を支払う義務があります(解雇予告制度)。
なお、解雇予告制度は、解雇の手続き上要求されるもので、当該解雇が有効かどうかとは無関係です。
つまり、解雇予告をした、または解雇予告手当を支払ったからといって、当該解雇が有効である、というわけではありません。
解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であること
しかし、反面、1カ月前に予告するか、1カ月分の解雇予告手当てさえ支払えば、即日解雇(即時解雇)も可能ということになります。
また、就業規則には、解雇の理由を(例示的にではなく)限定的に列挙することが必要とされています(判例)が、現実的には、解雇事由の一番最後に「その他前各号に準ずるやむを得ない事情があったとき」などと記載することも可能なので、労働者に不利な部分はまだ残っています。
そこで、裁判所は、労働者が就業規則に違反した場合であっても、個別具体的な事情から「解雇権の濫用」といえるならば、その解雇は無効である(これを「解雇権濫用の法理」といいます)として、使用者による解雇権の行使を制限してきました。
現在、この判例理論は労働基準法に明文化され、次のように規定されています。
第十八条の二 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
その他使用者による解雇を禁止する諸規定に違反していないこと
労働基準法は、その他、たとえば、労働者の国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇などを禁止しています。
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